工藤公康氏は実働29年のプロ野球生活で最優秀防御率4回、最高勝率3回、最多奪三振2回と大活躍した投手であり、2011年12月に現役引退を表明した。
高校卒業後、西武→ダイエー→巨人→横浜→西武と渡り歩いている。
本書では、第一線で生き残っていくための術を体験から語られている。
新しいことを取り入れることの大切さ、そして気づけるか、人は何歳になっても成長できるんだということを教えられた気がする。
プロとしては、野生の目を失ったら終わりという。
これは工藤氏がプロ三年目のシーズン途中にアメリカ1Aの教育リーグに留学した時のことで、向こうの選手たちは目の鋭さが恐ろしく違ったそう。
そこでギリキリの気持ちで取り組まないかぎり、プロにはなれないと悟ったのである。
それから、「自分には何が足りないか」「自分はまだ何をしていないのか」を考えるようになり、本人にとって自分の甘さを知ったとともにプロとしての本当の始まりだったんだと思う。
工藤氏は、身長が176センチ、腕も短く、肘も曲がっていて、野球選手としては決して恵まれた体格ではないからこそ、「知ろうとすること、理解しようとすること」を怠りなくやってきた。
これを最大の武器にしてきたのだ。
他の分野でも大事なことと言える。
工藤氏にとって、29歳の時にはじめて訪れた筑波大学でスポーツトレーナーの白木先生に教えられた身体のしくみに関する理論的な話も、現役を長く続けられた要因と言えよう。
野球の投げ方には、「遠心力を使って横の回転をかけて投げるタイプ」と「縦の回転で、遠心力というよりも、上から振り下ろす力を利用して投げるタイプ」の二種類しかないという。
工藤氏には目からウロコだったそうで、それからというものピッチャーを見るたびに、「このタイプはどちらだ、こっちはどれだ」というように、分析できるようになっていった。
白木先生には股関節のトレーニングなど、運動理論に沿ったトレーニングで厳しいながらも、自分で勝手に限界を決めないことも学んだようだ。
実戦では、ただやみくもに敵と戦えばいいというわけではなく、相手の力量を知り、自分の身のほどを知ることが不可欠という。
自分の弱さに気づき、プラスになると思えることならなんでも吸収していこうとする姿勢が、成長を後押しくれるとは考えさせられた。
最後に「自惚れず、でも、へこたれず。」という工藤氏の言葉が、現役通算224勝と積み重ねてきた男の言葉だけに重く感じた。
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