著者の日垣隆氏は作家・ジャーナリストとして活動されている。
まず「つながる読書術」とは何ぞやと思うところで、本書では五つの意味が込められているという。
第一に、ある本を読んで、次の本へと「つながって」いく読書の愉楽。
第二に、書物を通じて、人と人とが「つながって」いく醍醐味。
第三として、ネットやリアルの読書会などを介して、本来出会わなかった名著と「つながる」贅沢な時間。
第四は、本を読んで、無知または未知または無関心だった多彩な現実世界と向き合う「つながり」。
第五は、自己目的の読書にとどまらず、何が起きても不思議ではないこの時代に、良かれと思ったことを即行動に移せるか否か、という「つながり」方。
正直私は読書につながりがあるのをあまり考えたこともなく、とくに人と人とのつながりについては目からウロコだった。
本を通じた仲間は、経験としての共通項よりも、興味、関心、知性、教養など、考え方としての共通項をもって結びつきやすい仲間という。
大人になって、こうした仲間を見つけるのは、かつては至難の業だったが、ネットが状況を一変させてくれそうというのはわかる気がする。
その意味で読書会は、今後、有意義なコミュニティづくりの機会にもなるのは何だか楽しそうだ。
また、ウェブ上での読書会もあるそうで、その場合、意見の交換は「全員が書きやすく、読みやすいかたち」を模索する必要があるという。
本を読むという行為の基本は、著者がどのように述べているかを、まず正確に読み取るということで、著者の思考回路に入り、その主張にいったん飲み込まれてこそ、素直な読み方ができるというのはもっともだ。
そうでなければ読み進めることが難しくなる。
本を読んで答えを見つけたり、じっくり考えたりといった営みは、ネットで情報を得るより手間がかかるが、その分、必要に駆られて考える場面がたくさんあり、これは、創作料理をつくるようなおもしろさだと日垣氏は述べており、言い得て妙だなと思った。
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