著者の石黒圭氏は、日本語研究者である。
本書は読み方の引き出しを増やすことを目的とした本で、四部構成になっている。
第一部は「読み」の理論で、「読む」という行為はこれまでどのように考えられてきたか、その理論的背景を探っている。
第二部は「速読」で、時間に追われている人が、仕事や学びの現場で、速く効率的に読める方法を考える内容になっている。
第三部は「味読」で、読書を心から楽しみたいと思っている人が、文章の世界に自然に入り込んでいける方法を考える内容になっている。
第四部は「精読」で、創造性の高い仕事に携わる人が、新たな着想を得るために深く多面的に読める方法を考える内容になっている。
読む技術を高め、優れた読み手を目指すためには、読むという行為がどのようにしておこなわれているのかをまず知らなければならないので、次の四つの活動をおさえておきたい。
第一段階では、文字列を脳内に取りこむ活動「画像取得活動」。
第二段階では、画像として脳内に取りこまれた文字を文字として認識する活動「文字認識活動」。
第三段階では、文字列を意味に変換する活動「意味変換活動」。
第四段階では、脳内の辞書と文法によって意味に変換した文字列をすでに私たちの頭の中にある知識やその場の状況(あるいは文脈)と結びつけ実感をともなうイメージを構成する活動「内容構成活動」。
これらの四つの活動が循環的なプロセスとしてくり返し起こっていると考えられているそうだ。
では、TPOに合わせた読み方の戦略として、ここでは「話題ストラテジー」と「文脈ストラテジー」について紹介しよう。
文章を速く正確に読むためには、次のことを意識する。
①その文章が何について書かれたものなのかを考え、頭のなかの知識や経験に引きつけて理解する。
②文章を読みはじめるとき、タイトルや書き出しに目を留め、何の話題がどのように展開されるかを想像する。
文章を誤解なく円滑に読むためには、次のことを意識する。
①違和感のある表現に出会ったら、その表現とつじつまが合うように文脈を再調整する。
②指示詞と接続詞がある場合、そうした手がかりを頼りに、文章で展開される書き手の思考の筋を追跡する。
③文法を超える意味の連鎖が形に表れない場合でも、文章の全体像を意識し、内容の一貫性が保たれるように読みすすめる。
本書を読んで実に多様な読み方があるのだなと思った。
「読み」にも個性があり、新たに開発する力をつけられる方法は色々と参考になった。
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